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Chapter : Mion

“冷酷な春”

それは、人間が静止してゆく時代に生まれた言葉。

 

冷酷な春は、人間にあることを強いていた。

“静止し続けてはならない”

だが、人類は疲労に打ち克つことができない。

人類は次々に冷酷な春に負け、永遠に静止する“人柱”へと変わった。

いくらかの時が過ぎた。

人類は絶えていなかった。

世界には“永遠に動き続けられる身体”の少年と少女がいた。

 

ふたりは人柱の林立する世界を歩んでゆく。

眠ることさえ必要としない。どこまでも行ける。

​そんな無限を、ふたりは生きてゆくことに決めた。