TOP > NEWS & BLOG > 雪原たかし > 同人ゲームプレイ記録 No.4 「地球トつくもの」

同人ゲームプレイ記録 No.4 「地球トつくもの」

 コミティア124で出会った作品たちのプレイ記録というか報告というか感想というかなんというかの「同人ゲームプレイ記録」は第4回へと参ります。

 各作品の記事においては基本的に作品内の画像やスクリーンショット等を出しませんが、文章にはいくらかのネタバレ要素を含む場合があります。ご注意ください。

 というわけで、今回の作品は、「地球トつくもの Earth's last summer」(M-Arms)です!

 本作はR18作品なので、一八歳未満の方の閲覧を禁じます。

 

 

 


 

 

 

 

音声の利点

 登場人物の台詞に音声があることの利を、ボイス有の作品をプレイするたびに感じます。せっかくですので、僕の考える利点をいくつか紹介します。

 

  • テキストの長文化を可能にする

 多くの人にとって、音声は読むよりも遅く、その代わりとして理解の時間を少ないストレスで与えます。​それによって、比較的長い文章を一度に表示しても、テキストのみの場合よりもプレイヤーの理解が進むという効果が期待できます。

 ノベル系ゲームにおいて、テキストは主役であり、製作者はそれを推してしかるべきではあるのですが、内容がどうであれ長文はプレイヤーにとって負担になります。そこの折り合いをつけるための手段として、台詞への音声使用は有効なのかもしれません。

 

  • 登場人物を“現実に生きる者”と認識させる

 言うまでもなく、音声はプレイヤーの聴覚へさらなる要素を追加することになります。製作者からプレイヤーへ提供できる物語の感覚は視覚と聴覚にほぼ限られますから、そのどちらかでも増強できれば表現の幅も印象も良化するでしょう。

 台詞に限れば、登場人物の言動や心情が補完されるのはもちろんなのですが、プレイヤーの気のままではなくなった“間”が挟まれることに、僕は利を見出しています。台詞に音声がなければ、登場人物は完全にプレイヤーの気のままに台詞を言葉にします。そのプレイヤーの絶対を崩すことで、プレイヤーが登場人物を他者として、そしてさらに現実的な他者として認識せざるをえない状況を生み出すことができます。その壁を越えて共感することがあれば、それはさらに深い共感となるでしょう。

 

  • 文章作法を崩すことが許される

 小説作品においては“文章として成立しているかどうか”ということに絶え間なく配慮していなければならない……はずです。そして、人によっては地文だけに留まらず、登場人物の発言や会話においてもそれを要求します。

 しかし、しかしです。考えて……いえ、振り返ってみましょう。

「話をしている時にどんな時でも文章として成立しているかを考えることができるか」

「自分の話は文章化しても常に成立している、ということがありえるか」

 できないです。ありえないです。むしろ多くの人は文章としては崩れに崩れた話を日常でしています。それでも文章としての成立を要求してくるならば、現実の会話を出せばいい。それが現実であれば、現実と思わせることができればいいのです。

 “文章としての成立”は、重要なことでありながら、重視すればするほどに現実を削り捨てることにつながります。崩すことが許されれば、“現実への接近”という製作時の大きな懸案をいくらか軽くすることができます。

 

 

画面振動

 僕はフェード教信者なので、過去作の画面演出はかなり控えめです。背景はおろか立ち絵もほとんど動かしていません。

 中でも背景を動かしたくないと僕は思っていました。なぜかというと、背景を動かすと周縁部に基本色が現れてしまうからです。

 ところが、他のどの作品を見ても動かしまくっているわけです。なぜでしょうか。動作は強力な演出方法だからです。

 そういう結論に到って、僕は情けなさに笑いそうになりました。「だれかへ届いて こころよ、動け」と掲げておきながら、動かそうとしていない領域があったのですから。プレイヤーの見ている画面を振動させれば、プレイヤーが動かされないはずがないのですから。もちろん視覚的な話で、物理的な話ではありませんよ。

 本作はかなり動きのある画面でした。スキップをするとたまにフリーズするくらいに。それを見て冷静冷徹でいられるほど感情を諦めてはいないので、ようやくこのことに気づくことができました。次作品に活かしたいです。

 

 

 


 

 

 

 

 

 製作者として学ぶところがあり、プレイヤーとして楽しむところもあり、いい時間を過ごしました。ハーレムルートに進めず試行錯誤に入った時には少し苦しかったですが、とても見事な設定構成に、あるいは従い、あるいは打ち勝つ、そんな物語をすべて見届けることができて、僕は嬉しいのですよ。

 ちなみに、僕はハーレムルートでのリク&ヨシオカさんペアの振る舞いがお気に入りです。

 以上、「地球トつくもの」のプレイ記録でした。

 次回は「雪子の国」(スタジオ・おま~じゅ)のプレイ記録をお届けします。しばらくは執筆のほうに重点を置くので、次回までは少し長くなります。

 ではまた!

雪原たかし  2018/05/26